デパケン、セレニカ(バルプロ酸ナトリウム)

デパケン(バルプロ酸ナトリウム)について

[ 一般名 ]
バルプロ酸ナトリウム

[ 効能・効果 ]
1.各種てんかん(小発作・焦点発作・精神運動発作ならびに混合発作)およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等)の治療
2.躁病および躁うつ病の躁状態の治療
 →通常1日量バルプロ酸ナトリウムとして400~1,200mgを1日1~2回に分けて経口投与する
3.片頭痛発作の発症抑制
 →通常1日量バルプロ酸ナトリウムとして400~800mgを1日1~2回に分けて経口投与する

デパケン(バルプロ酸ナトリウム)の作用機序

脳は神経細胞が集積している器官です。ここでは、神経細胞が興奮することによって、信号が伝達していきます。しかし、神経細胞に異常な興奮が起こることにより、てんかん発作を引き起こすことがあります。これらてんかんの発症には、イオンの動きが関与しています。

神経の興奮伝達に関わるイオンとしてはNa+、Ca2+、Cl-などが知られてます。Na+、Ca2+は興奮性のシグナルであり、Cl-は抑制性のシグナルです。

通常、細胞内はマイナスの電荷を帯びています。ここに神経興奮のシグナルが来ると、Na+が細胞内へ流入します。プラスの電荷を帯びているNa+が入ってくるため、それまでマイナスの電荷を帯びていた細胞内はプラスの電荷へと転換します。

このような変化が合図となり、神経の興奮が伝わっていきます。それでは、先ほどとは逆に、マイナスの電荷をもつCl-が入ってくるとどうなるでしょうか。

細胞内はマイナスの電荷となっていますが、Cl-の流入によってさらにマイナスへと傾きます。この状態では、プラスの電荷をもつNa+などが流入してきたとしても、なかなか脱分極が起こりません。つまり、神経興奮が起こりにくいのです。

つまり、Cl-の流入が促進されると、神経の興奮が抑えられます。てんかんであれば、神経細胞の異常な興奮を抑制することにより、てんかんによる発作を抑えることができます。

私たちの体内には「Cl-の流入」を促進させる物質が存在し、これをGABAと呼びます。GABAを増やせば、Cl-がたくさん入ってくることで神経興奮が起こりにくくなります。

ただし、GABAはある酵素によって不活性化されます。この酵素をGABAトランスアミナーゼと呼びます。GABAトランスアミナーゼを阻害すれば、GABAの不活性化が抑えられるため、GABAの量を増やすことができます。

デパケン(バルプロ酸ナトリウム)の半減期と効果

デパケン錠(デパケンR錠)は最高血中濃度到達時間が0.92時間(10.26時間)、半減期が9.54時間(12.92時間)の気分安定薬です。最近は、徐放製剤のデパケンR錠を使うことが多いです。

デパケン錠を服用すると、0.92時間(食後は3.46時間)で血中濃度がピークになります。そこから少しずつ薬が身体から抜けていき、9.54時間ほどで血中濃度が半分になります。

この血中濃度がピークになるまでの時間を「最高血中濃度到達時間」、血中濃度が半分になるまでを「半減期」といいます。

デパケン錠は作用時間はそこまで長くはないので、1日2~3回に分けて服用することが一般的です。毎日服用していると、およそ6~7日で血中濃度が安定します。このため、少なくとも1週間は様子をみながら効果をみていきます。

デパケン錠の効果を安定させるために、デパケンR錠という徐放製剤が発売されています。最近はこのデパケンR錠が使われることが多くなっています。

デパケンR錠は作用時間が長く、1日1回の投与でも効果が持続します。最高血中濃度到達時間が10.26時間(食後は8.95時間)、半減期が12.92時間となっています。

デパケンR錠からデパケン細粒への切り替え

デパケンR徐放錠から細粒への切り替えについて、協和発酵キリンに確認してみたところ、

“1日のトータル用量を同じにすればよい”

との解答をいただきました。
つまり、「デパケンR錠200mg 1錠 分1」の場合→「デパケン細粒20% 1g(200mg/g) 分2」に切り替えればよいですね。