界面活性剤による中毒死

事件の概要

2016.9.23 神奈川県横浜市神奈川区の大口病院で輸液に異物が混入していたことによる患者死亡事件を受けて、殺人捜査が始まりました。
その後、この異物は消毒剤による界面活性剤が原因だと報じられています。そもそも、界面活性剤とは、どんなものに含まれていて、どんな中毒症状が起こるのでしょうか??

そもそも界面活性剤って??

界面活性剤とは、物質と物質の境界面で働き、その性質を変化させるものを指します。本来、混ざり合わない水と油を混ざりやすくするため、ほとんどの家庭用の洗剤にも使用されています。また、細菌のタンパク質を変性させて殺す消毒作用もあるため、病院などでは消毒液として置いてあることも多いです。

洗剤・界面活性剤中毒とはどんな病気か

家庭でよく使われる衣類・食器用の洗剤、また消毒液には、陰イオン系、非イオン系などの界面活性剤が含まれています。
事故や誤飲、自殺目的の飲用などで洗剤が口に入った場合、少量であれば通常は問題ありませんが、多量の場合は、消化管粘膜の損傷や筋力の低下、けいれんなどが起こり、肝障害、ショックなどにより死亡することもあります。
首都大学東京の廣田耕志教授(細胞生物)は2016年9月27日、J-CASTニュースの取材に対し、界面活性剤について「目に入れば失明の可能性があり、体内に入れば細胞に毒性が働いて大変危険です。それを点滴に入れるなんて、ありえないですね」と解説しています。

原因は何か??

界面活性剤には、陰イオン系、非イオン系のほか、陽イオン系、両イオン系があります。陰イオン系、非イオン系界面活性剤は、石鹸や洗浄剤として使用され、家庭用洗剤のほとんどにはこれらが使われています。
一方、陽イオン系界面活性剤は柔軟剤、殺菌剤、静電気防止剤などに用いられ、両イオン系は洗浄剤、柔軟剤、静電気防止剤などに用いられています。

読売新聞の記事によると、今回混入されて界面活性剤は「陽イオン系」であることも判りました。この陽イオン系の界面活性剤、日本中毒情報センターのホームページを見ると”その成分を10%含む液体を飲むと、25~250mlで致死量”になるそうです。
家庭用洗剤に多く含まれる「陰イオン系」の界面活性剤については幸い毒性はそれほど強くないようです。認知症の高齢者が食器用洗剤を1本飲んでしまい入院したという例もあるようですが、大量でなければ心配ありません。
そういえば、映画「シックス・センス」では少女キラが母親に床洗剤をもられたことが原因で命を落としているシーンもありました。

症状の現れ方

経口摂取の場合は、口腔や咽頭、消化管の粘膜を刺激し、損傷します。そのため多量に飲むと、腹痛や嘔吐、下痢を起こし、吐血、下血がみられることもあります。また、脱力、筋力低下、けいれんなどの神経症状が生じます。
さらに、肝障害、循環血漿量減少性ショック、アシドーシス、肺水腫などが起こり、死亡することもあります。

治療の方法

牛乳または卵白を飲ませます。洗剤・界面活性剤を多量に飲んだ場合は、胃の洗浄を行います。下剤、活性炭を投与することもあります。